トイプードルが性格悪いと言われる5つの理由と正しい直し方

「トイプードルは性格悪い」という噂を耳にして、これから迎えようと考えている方は不安に感じていませんか。

あるいはすでに一緒に暮らしている中で、その性格が激しい一面や気性が荒いと感じる行動に、どう接すれば良いか悩んでいる飼い主さんもいるかもしれません。

時にはイライラするあまり、殴りたくなるほどの強いストレスを感じ、「飼って後悔している」「飼うんじゃなかった」とさえ思ってしまう瞬間もあるでしょう。

特にオスは大変だという話もよく聞かれます。

しかし、そうした行動の裏には必ず理由が存在します。

この記事では、トイプードルがなぜ性格悪いと言われてしまうのか、その背景にある原因を深く掘り下げ、愛犬の寿命が尽きるまで、かけがえのないパートナーとして共に幸せな時間を過ごすための具体的な接し方について、専門的な知見も交えながら詳しく解説していきます。

トイプードルが性格悪いと言われる理由

トイプードルの性格が激しいと感じる時

トイプードルの性格が「激しい」と感じられる瞬間は、多くの場合、彼らが持つ高いエネルギーと知性が満たされていないサインです。

もともとプードルは水鳥の猟犬として活躍していた歴史を持ち、その名残で非常に活発で運動能力が高い犬種です。

そのため、見た目の可愛らしさから想像される以上の運動量を必要とします。

例えば以下のような行動は「性格が激しい」と誤解されがちですが、その裏には明確な原因が潜んでいます。

• 執拗な要求吠え: おやつや遊びをねだって甲高い声で吠え続ける行動です。これは単なるわがままではなく、「暇だ」「退屈だ」「もっと構ってほしい」という欲求の現れです。知的欲求が満たされていない場合にも見られます。
• 過度な興奮と飛びつき: 飼い主の帰宅時や来客時に、嬉しさのあまり我を忘れて興奮し、飛びついたり走り回ったりします。これは感情のコントロールが未熟であることや、社会化期に落ち着いて挨拶する方法を学べなかったことが原因と考えられます。
• 他の犬や人への攻撃性: 散歩中に他の犬に遭遇すると、激しく吠えたり唸ったり、時には噛みつこうとすることもあります。これは恐怖心や警戒心の裏返しであることが多く、社会経験の不足からくる防衛本能の一種です。

これらの行動は、十分な散歩や運動、そして頭を使った遊び（ノーズワークや知育トイなど）が不足していることへのフラストレーションが、問題行動として表面化しているケースがほとんどです。

彼らの有り余るエネルギーと知的好奇心を満たしてあげることが、落ち着きを取り戻すための第一歩となります。

気性が荒いのはしつけが原因？

「うちの子は生まれつき気性が荒い」と思い込んでいる飼い主さんもいますが、トイプードルの攻撃的な行動の多くは、後天的な学習、特にしつけの方法に起因します。

ジャパンケネルクラブ（JKC）の犬種標準（スタンダード）でも、プードルの気質は「忠実で、学習能力があり、訓練しやすい」とされており、本来は攻撃的な犬種ではありません。

ではなぜ気性が荒い行動が見られるのでしょうか。

最大の原因は「一貫性のないしつけ」です。

また、恐怖や痛みを与える体罰的なしつけは最悪の結果を招きます。

叩く、蹴るといった行為は、犬に強い恐怖心と飼い主への不信感を植え付け、自分を守るために攻撃的になる「防衛的攻撃行動」を誘発します。

犬は「飼い主は危険な存在だ」と学習し、手を振り上げただけで噛みつくようになることもあります。

さらに、犬の社会性を育む上で極めて重要な「社会化期」（一般的に生後3週齢～14週齢頃）に、様々な人、犬、物、音に触れさせる経験が不足していると、未知のものに対する恐怖心が強くなり、臆病で攻撃的な性格になりやすいことが知られています。

気性が荒いと感じる行動は、犬からのSOSサインかもしれません。

しつけの方法を根本から見直す必要があります。

トイプードルのオスが大変な場合

「オスのトイプードルは大変」というイメージには、男性ホルモン（テストステロン）の影響による特有の行動が大きく関わっています。

これらの行動は本能に根差したものであり、しつけだけで完全に抑制するのは困難な場合があります。

特に未去勢のオスに顕著に見られるのが、以下の3つの行動です。

1. マーキング（縄張り行動）

電柱や壁、家具の角など、様々な場所に足を上げて少量の尿をかける行動です。

これは自分の存在を他の犬に知らせ、縄張りを主張するためのマーキング行動です。

室内で頻繁に行われると、衛生的な問題や臭いの原因となり、飼い主にとって大きなストレスとなります。

2. マウンティング

他の犬（性別問わず）や人の足、クッションなどに乗りかかって腰を振る行動です。

これは性的な欲求だけでなく、相手より自分の方が優位であることを示すための「社会的行動」としての側面も持ち合わせています。

来客時などに行うと、気まずい思いをすることもあります。

3. 他のオス犬への対抗心

縄張り意識やメスを巡る競争心から、散歩中に出会った他のオス犬に対して非常に攻撃的になることがあります。

相手を威嚇して激しく吠えたり、喧嘩に発展してしまったりと、散歩がストレスフルな時間になる原因となります。

これらの行動は、去勢手術によってテストステロンの分泌を抑えることで、軽減・解消されるケースが多く報告されています。

しかし、去勢手術には性格が穏やかになる、特定の病気のリスクが減るといったメリットがある一方で、麻酔のリスクや術後の体重管理が必要になるなどのデメリットも存在します。

手術の時期や必要性については、愛犬の性格や健康状態を考慮し、必ず獣医師と十分に相談した上で決定することが肝心です。

トイプードルにイライラする瞬間の心理

愛情を持って迎えたはずの愛犬に、思わずイライラしてしまう。

そんな自分に罪悪感を抱く飼い主さんは少なくありません。

しかしその感情はごく自然なものであり、決してあなたが冷たい人間だからというわけではありません。

イライラの背景には、飼い主側の様々な心理が複雑に絡み合っています。

最大の要因は「理想と現実のギャップ」です。

「賢いはずのトイプードルが、なぜ言うことを聞かないのか」「こんなにお世話しているのに、どうして問題行動を繰り返すのか」という思いは、期待が裏切られたことによる失望感や無力感に繋がり、それが怒りやイライラとして現れます。

また飼い主自身の精神的・肉体的な疲労も見過ごせません。

仕事や家事、育児で疲れ果てている時に、愛犬が吠えたり、いたずらをしたりすると、普段なら許せることでも我慢の限界を超えてしまうことがあります。

これは、犬の問題というよりも、飼い主のキャパシティの問題です。

イライラを感じた時は、自分を責めるのではなく、その感情を客観的に見つめることが大切です。

「何に対してイライラしているんだろう？」「犬の行動？それとも自分の思い通りにならないこと？」と自問自答してみてください。

多くの場合、問題の根源は犬ではなく、自分の心の中にあることに気づくはずです。

まずは深呼吸をして、一杯のお茶を飲むなど、自分自身を落ち着かせる時間を作りましょう。

冷静さを取り戻すことが、問題解決への第一歩となります。

ストレスで殴りたくなる感情の対処法

愛犬の行動が改善されず、ストレスが極限に達した時、「殴りたくなる」という衝動的な感情が湧き上がることがあります。

この危険な感情は、心と体が限界に達していることを示す最終警告です。

まず何よりも先に、いかなる理由があっても動物に暴力を振るうことは許されず、動物愛護管理法で固く禁じられている犯罪行為であることを強く認識してください。（参照：環境省「動物の愛護と適切な管理」）

暴力は愛犬との信頼関係を回復不可能なレベルまで破壊し、犬に深刻な身体的・精神的ダメージを与えるだけでなく、飼い主自身にも深い心の傷を残します。

その一線を越えてしまう前に、必ず以下の緊急対処法を実行してください。

助けを求めることは、決して恥ずかしいことではありません。

むしろ愛犬と自分自身を守るための、最も責任ある行動なのです。

賢さが裏目に出るケースとは

トイプードルの卓越した知能は、トレーニングを容易にする大きな利点ですが、その一方で飼い主を悩ませる原因にもなり得ます。

彼らは非常に観察眼が鋭く、物事の因果関係を素早く学習する能力に長けています。

この能力が、時として「悪知恵」として飼い主の目に映ることがあります。

例えば賢いトイプードルは、飼い主の行動パターンを読んで先回りします。

飼い主が「おやつ」という言葉を発する前に、おやつの入っている棚の前でお座りして待っていたり、飼い主が出かける準備を始めると、気を引くためにわざといたずらをしたりします。

これは「どうすれば自分の要求が通るか」「どうすれば注目してもらえるか」を正確に理解し、飼い主を操作しようとする行動です。

また、一度でも「吠えたら構ってもらえた」「要求が通った」という経験をすると、それを成功体験として記憶し、常套手段として使うようになります。

さらに、しつけに一貫性がないと、飼い主の気分や状況を敏感に察知し、「今は言うことを聞かなくても大丈夫そうだ」と判断して指示を無視する「試し行動」に出ることもあります。

このような賢さが裏目に出るのを防ぐためには、飼い主が犬よりも一枚上手である必要があります。

つまり、常に一貫したルールを適用し、犬のペースに巻き込まれるのではなく、飼い主が主導権を握り続けることが重要です。そして、その高い知能をポジティブな方向に導くために、単純な遊びだけでなく、芸を教えたり、隠したおやつを探させるノーズワークを取り入れたりして、彼らの知的好奇心を刺激し続けてあげることが、良好な関係を維持する秘訣です。

「性格悪い」と感じるトイプードルとの接し方

トイプードルを飼って後悔しないために

トイプードルとの生活で「こんなはずではなかった」と後悔しないためには、その愛くるしい見た目の奥にある、犬種としての特性と、一つの命を生涯にわたって預かるという責任の重さを、迎える前に深く理解しておく必要があります。

衝動的に飼い始めるのではなく、以下の点を家族全員で十分に検討し、覚悟を決めることが不可欠です。

1. 時間的・身体的コストの覚悟

犬との生活は、想像以上に多くの時間を拘束されます。

毎日の散歩は天候に関わらず欠かせませんし、活発なトイプードルには、ただ歩くだけでなく、ドッグランなどで思い切り走らせる時間も必要です。

また、毎日の食事の準備、トイレの始末、定期的なブラッシングや歯磨きといった日々のお手入れ、そして月に一度程度のトリミングも必須です。

これらの世話を、今後15年以上にわたって継続する覚悟はありますか。

2. 経済的コストの現実的な把握

犬を飼うには、生涯で数百万円単位の費用がかかります。

初期費用（生体価格、ケージ、食器など）に加え、毎月のフード代、おやつ代、ペットシーツ代、トリミング代、そして毎年のワクチン接種やフィラリア・ノミダニ予防薬の費用が発生します。

さらに、最も大きな負担となりうるのが、病気やケガをした際の医療費です。

ペットには人間のような公的健康保険がないため、治療費は全額自己負担となり、手術ともなれば数十万円かかることも珍しくありません。

例えばアニコム損害保険株式会社の調査によると、犬の飼い主は年間で約34万円を愛犬のために支出しているというデータもあります。

こうした万が一の出費に備え、ペット保険への加入や、専用の貯蓄をしておくなどの経済的な備えが必須です。

3. 学習と努力の継続

トイプードルは非常に賢いため、正しい知識に基づいたしつけを行わなければ、すぐに飼い主を見下し、問題行動を起こすようになります。

犬を迎える前に、しつけに関する本を最低でも数冊は読み、基本的なトレーニング方法（ハウストレーニング、アイコンタクト、おすわりなど）を学んでおきましょう。

また迎えた後も、必要であればしつけ教室に通ったり、ドッグトレーナーの指導を受けたりするなど、愛犬のために学び続ける姿勢が求められます。

「飼うんじゃなかった」と思う前の確認事項

愛犬との関係に疲れ果て、「飼うんじゃなかった」という絶望的な気持ちに苛まれているなら、一度感情を脇に置いて、客観的に現状を分析してみましょう。

問題行動の裏には、飼い主が見過ごしている原因が隠れていることがほとんどです。

以下のチェックリストを使って、愛犬と自身の状況を冷静に振り返ってみてください。

これらの項目を一つ一つ見直し、改善できる点から手をつけていくことで、突破口が見えるはずです。

決して一人で抱え込まず、獣医師やトレーナーといった専門家の力も借りながら、解決の道を探っていきましょう。

信頼関係を築くためのコミュニケーション

トイプードルとの間に存在する問題行動の多くは、飼い主との信頼関係が正しく構築されていないことに起因します。

犬は心から信頼し、尊敬できるリーダーがいることで精神的な安定を得ます。

その揺るぎない信頼関係は、日々のポジティブなコミュニケーションを通じて、時間をかけて育んでいくものです。

信頼関係構築の基本は「ポジティブ・リンフォースメント（正の強化）」という考え方です。

これは、望ましい行動をした時に、犬にとって嬉しいこと（褒める、おやつをあげる、撫でるなど）を与えることで、その行動を自発的にするよう促すトレーニング方法です。

叱りつけて言うことを聞かせるのではなく、「良いことをすれば、良いことが起こる」と犬に学習させることが目的です。

また犬が発する「カーミングシグナル」というボディランゲージを理解しようと努めることも、深い相互理解には不可欠です。

あくびをする、鼻を舐める、体を掻くといった行動は、ストレスや不安を感じているサインかもしれません。

これらの小さなSOSを飼い主が読み取り、「大丈夫だよ」と優しく対応してあげることで、犬は「この人は僕の気持ちを分かってくれる、安心できる存在だ」と感じるようになります。

日々の散歩、遊び、お手入れといった全ての触れ合いが、コミュニケーションの機会です。

常に穏やかな声で話しかけ、愛情を持って接することで、トイプードルはあなたを唯一無二のリーダーとして認め、最高のパートナーになってくれるでしょう。

トイプードルの寿命と向き合う覚悟

トイプードルを家族として迎えることは、その命が尽きる瞬間まで、全責任を負うという厳粛な契約を結ぶことです。

一般的にトイプードルの平均寿命は14年から17年程度と、犬種全体で見ても長寿の部類に入ります。

この長い年月を、変わらぬ愛情と責任感を持って共に歩む覚悟が、飼い主には何よりも求められます。

愛犬との生活は、子犬期の愛らしい時期だけではありません。

やがて成犬となり、そして必ず老いが訪れます。

シニア期に入ると、人間と同じように様々な身体的変化が現れます。

• 身体能力の低下: 視力や聴力が衰え、散歩のペースが落ちたり、段差を嫌がるようになったりします。
• 病気のリスク増加: 関節疾患（特に膝蓋骨脱臼）、心臓病、白内障、腫瘍など、加齢に伴う病気にかかりやすくなります。定期的な健康診断と、日々のきめ細やかな観察が重要になります。
• 介護の必要性: 寝たきりになった場合の床ずれケア、自力で食事ができなくなった際の補助、トイレの失敗が増えることによるおむつの使用や清掃など、身体的・精神的な負担を伴う介護が必要になる可能性があります。
• 認知症の発症: 昼夜逆転、夜鳴き、徘徊、狭い場所に入り込んで動けなくなるなど、認知症の症状が見られることもあります。

老犬の介護は、時間的にも精神的にも、そして経済的にも大きな負担を伴います。

高額な医療費や介護用品代が必要になることも覚悟しなければなりません。

それでも、どんな姿になっても、最後まで尊厳を守り、愛情を注ぎ続け、穏やかな最期を迎えさせてあげること。

それが、飼い主としての最後の、そして最大の責任です。

いつか必ず訪れる「別れ」の時を想像するのは辛いことですが、その瞬間までの一日一日を大切に慈しみ、数えきれないほどの幸せな思い出を心に刻むことが、後に訪れるペットロスという深い悲しみを乗り越えるための、何よりの力となるでしょう。

「トイプードルは性格悪い」の誤解を解く